ダボ打ち
ダボ打ち加工について。
先ず、この作業の目的は、「ギターから出る音を一回にすること」にあります。
PAの領域における、グラフィックイコライザーによる、音場補正。
イコライザーを使うのですから、この音場補正はイコライジングの作業です。
イコライザーはカタカナ語、つまり外来語ですが、意味を解っておいた方が良いと思っています。
イコライザーじゃなくて、イコーライザー。
つまり、イコール(=)ライズするもの。
これで意味は解りました。
では何をイコーライズするんでしょうか?
場所が吸う音、そして、重なる反射音ですね。
つまり、凹みと出っ張り。
場所の音と書くと、PA領域における話のように聞こえるかもしれません。
しかしこれは、楽器領域にもそのまま当てはまるのです。
マーシャルアンプが大きいのは、当初PAも兼ねたものとして考えられていたからなのは確かだと思います。
プレイヤーの意識の中でのイコライジングは、箱の癖、アンプの癖、ギターの癖に対応するものになります。
しかしギター、ベースアンプがPAを兼ねると考えれば、アンプのイコライザーは音場補正という意味も持って来るのは解ると思います。
この部分に関して、意識、無意識問わず、誰もが今でもやっていますよね。
場所が吸う音、反射する音。
これをイコーライズしている訳です。
例えば、そのアンプとキャビネット、ギターを、無響室に入れて音を出すとします。
完全にデッドな空間です。
反射音は無いとします。
音を吸ってしまう帯域は全帯域に渡ります。
イコライザーは触らなくて済むでしょうか?
済みませんよね。
ギターからのシグナルのイコーライズが必要だからです。
これは、アンプをPAと考えない場合の普通、つまり常識です。
ではこのイコーライジングの作業で、何を調整しているのでしょうか?
それは、弦の振動が、ギターに当たって跳ね返る音、吸い過ぎるまでに吸われる音の調整です。
この部分の木材でのイコライジングこそが、ギター製作という作業の中身です。
それを一段深く、そして緻密に達成する技術がダボ打ちです。
具体的に言えば、音が一回しか出ないギターにする為に開発した技術です。
音が一回しか出ないという状況を説明すると、弦の音をボディーが吸収する中で、各帯域別の吸収力を理想的な形にし、その吸収のムーブの中でのみ、弦の振動をギター型にシェイプするということ。
この究極の理想を、毎回達成出来る技術の開発に成功しました。
ヴィンテージギターと現行品、何が違うのか?
これは、ローをどこに設定するのか?に尽きます。
皆さんはほとんどの場合、ギターアンプにセット売りされているものより小さな低音用スピーカーがついている音楽鑑賞用スピーカーで音楽を聞いています。
今ならば、電話、通話用スピーカーで音楽を聞いている人が一番多いでしょう。
ギターは中音楽器ですから、当然それよりも低音を担当する楽器がバンドにはあります。
それらの楽器の音を普通に再生するには、ギターアンプと合わせて使うスピーカーよりも口径の大きいスピーカーが必要となります(ベースのキャビネットに入っているスピーカー径の方が、ギターのそれより小さかったりする理由は、ご自分で考えてみて下さい)。
けれどもそういう聴き方をしている人っていませんよね(私はやっていますが)。
となると、低音楽器の音に、一般家庭で皆が使うスピーカーの特性に合わせての音のデフォルメが必要になってきます。
「低音を上に上げるしかない」のは理解出来ると思います。
ヤマハのNS10Mのウーファー、キャビネットの表面積全てを合わせても、バスドラムのヘッド一枚の面積にも満たないのは見て解りますよね?
それ以下の環境で音楽を鳴らすと考えた時、このデフォルメが必要無い楽器が、現行品と考えて良いと思います。
他のメーカーは、ユーザーからのクレームも無いので、不可効力を好意的に解釈しているのでしょうが、現行ギブソンは解ってそれをやっています。
このデフォルメに気が付かない人は、腰高の音を発するギター、ベースの方が間違いなく好きです。
その中にはハズレのヴィンテージギター、ベースも含まれますが、一般の音楽鑑賞環境向けに音楽を提供すると考えた時、そのハズレはハズレでは無いかもしれません。
特にベースはそうでしょう。
ダボ打ちはそういう要望にも対応出来る技術ですので、ご相談ください。
詳しい作業内容はこちら→ボディー側だけの加工、エレキベースの加工